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長谷川利行

長野県松本市の和菓子屋さんが経営する和喫茶に行ったことがある。
和風の佇まいで窓からは竹林が見える落ち着いたスペースで椅子に座り和菓子と抹茶をいただく。
壁にかかる絵に目を止める。
その絵は小さな肖像画であった。そのポートレートは平面的で、輪郭がはっきりしていなかった。顔は白い絵の具で塗りつぶされているような、その絵の具の白が室内に入る外光で反射していて白く光っていた。
そして、こっちへ、こっちへ迫ってくる絵だった。
あの光っている絵、白く光っている絵はなんだろう!誰が描いたのだろう?
強烈な印象を残したこの絵は「長谷川利行」が描いたものだった。
彼の絵を初めて見たのだった。

3月12日の日曜美術館で長谷川利行を取り上げていた。やはり彼の生き方があのような絵になっていたのだ。語りかけてくる絵、迫ってくる絵というのは作家の分身である。あらゆる虚飾や一般的に言われるような「絵が上手い」というものとは遠く離れているけれど、「生きている肉体」というものに最も近い絵だった。

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